幻の海|NAOYA OHKAWA

さっきから歩けど歩けど壁。
行けども、門のようなものも見当たらず、なんの壁なのかさえ判然としない。
壁の中から、小麦の焦げた匂いでもすれば、パン工場か、焼畑農業かと見当がつくが、匂いもしない。
もしかしたら、ただ壁があるだけで、壁の中には壁に囲まれた空間があるだけなのかもしれない。
もしくは、すでに僕が壁に囲まれているのかもしれない。

暑さと疲労のせいで、哲学をはじめたばかりの学生のような、よくわからないことを考える。
さも難しげなことを、難しい顔で考えているように見せかけようとしてはいるものの、あほづらと高級なカメラをぶら下げた異国の人に他ならない。

疲れた、暑い、喉が乾いた。

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